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9.11における支援

 2011年9月11日に起こったアメリカの同時多発テロは、死者2819名のうち、完全な遺体は289体、何も手がかりもない家族は1717家族に及びました。

 Pauline Boss博士はワールドトレードセンターにあるビルサービス会社の要請により、そこで行方不明となった人たちの家族のケアにあたることになりました。

 32日後には、要請を受けたミネソタとニューヨークのセラピストチームによって、最初の行方不明者家族の集まりが開かれることになりました。

 家族の集まりに先立ち、セラピストに研修が実施されました。その研修では、あいまいな喪失に関する理論的な考え方と、それによって引き起こされるさまざまな反応や課題を知る所から始められ、セラピスト自身が支援の前に自分のあいまいな喪失の振り返りの作業をしておくこと、文化的背景への理解を深めることが、組み込まれました。

 家族ミーティングでは、以下のことを原則に進められました。

1.家族を1つの部屋に集め、彼らの体験を「あいまいな喪失」と名づける

2.家族ができるだけ情報が集められるようにサポートする

3.安全な場を提供する

4.終結という言葉を使わない

5.家族の機能を保つために、家族の役割やルール、儀式的な事を扱う

6.家族間に秘密がないかをチェックする

7.希望について話し合う

8.両値的な考えを正常なこととしてとらえる

 集まりに参加した家族は、次のように語りました。

「この集まりは大きな助けとなった。
自分たちのつらい体験を分かち合うことができた。」

「今日ここにいる皆が自分の悲しみを聞いてくれ、
理解してくれたと感じることができた。」

「自分の子どもたちの前で、この事を話したのは初めての経験だった。
とても大切な事だった。」

 Pauline Boss博士は、行方不明者家族の支援においては、PTSD(トラウマ)の治療方法だけでは不十分であると述べています。心理面で深刻な問題が生じている人はトリアージし、然るべき専門家に紹介することが大切ですが、それ以外の多くの人たちは、気持ちがしっかりと理解され、受けとめてもらえたと感じることのできる環境があれば、自分自身の力で回復していくことができます。

 9.11では、Boss博士がコーディネートした家族の集まりを機に、多くの行方不明者家族が次の1歩を踏み出しました。

Pauline Boss, et.al.: Healing loss, ambiguity, and trauma: A community-based intervention with families of union workers missing after the 9.11attack in New York City. J Marital and Family Therapy 29(4). 455-467.2003. を参照。

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