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認知症とあいまいな喪失


Pauline Boss博士は、「そこに存在するが、以前のその人ではなくなってしまう」認知症は、家族に「あいまいな喪失」をもたらすと述べています。認知症の進行に従って、家族は明らかにその人を失っているわけではないにも関わらず、以前にあったその人との関係性のすべてが変化し、多大なストレスにさらされます。

 「夫でありながら、夫でない」「母でありながら、母でない」その人を介護し続けることは、並大抵なことではありません。やがて、いつ始まり、いつ終わるのかもわからない慢性的な悲しみが、介護の問題以上に家族のストレスを増幅させ、非常に大きな苦痛と不安を引き起こします。

 Boss博士はそのような家族に対し、まずは自分が経験している「あいまいな喪失」について、よく知りなさいと説いています。
 認知症は、日々、行きつ戻りつしながら病状が進行するため、家族は繰り返し何度も喪失感を体験し、自分の気持ちに区切りをつけたくても、それが難しくなります。認知症の人との関係を以前と変わらない状態で保ち続けようとする介護は、家族を次第に追い詰めていきます。
 家族の不安や絶望感は、その家族のせいではありません。「あいまいな喪失」がそうさせるのです。

 無理に自分の気持ちを閉じ込めないで下さい。「悲しい」「元気がでない」「やりきれない」など、自分自身の素直な気持ちをもっと大切にして良いのです。認知症の人に対して、「自分が何とかしなくては・・」ではなく、ほどよい距離感で、状況の変化に合わせた新たな関係性を探しましょう。そして自分にとって心の支えとなる人との時間も大切にしましょう。

plant_013.jpgBoss博士は、家族のようにそばにいてほしい人を「心の家族」と呼んでいます。従来の家族の形にこだわらず、今の状況にあった生き方に転換していくことで、「新しい家族の形」を見つけていくのです。


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