Pauline Boss博士からの緊急メッセージ
「あいまいな喪失理論」を感染症流行に役立てるために
 

今、世界中の人々が、新型コロナウイルスのパンデミックの中で、先の見えない不安の中にいます。この流行による不確かさは、ビジネス、コミュニティ、家族、個人など、さまざまなレベルで起こっています。例えば、外にでる自由の喪失、生活のコントロール感の喪失、いつも通りの人間関係の喪失、金銭的・経済的な喪失、安全性の喪失、家族や友人との物理的な接触の喪失、コンサートに行ったり、カフェでくつろいだりといった機会の喪失、など広範囲です。これらはすべて「あいまいな喪失」と呼ぶことができます。

 

今、広い意味で、私が提唱する「あいまいな喪失理論」が役立つと思います 。私たちを悩ませているのは、単にウイルスではなく、このような取り巻く状況のあいまいさであるという認識をもつこと、この状況を「あいまいな喪失」と名づけることで、私たちは 自分のストレスを理解し、それに対処しやすくなります。

 

パンデミックの状況下で、怖がり、恐れ、混乱し、怒りを覚えることは、とても自然で、正常な反応です。ただ、それらは大きなストレスを引き起こします。特に人生を自分自身の力でコントロールしてきた、あるいはコントロールすべきである、と考える人にとって、あいまいな喪失によって引き起こされる不確実性は、より高いストレスになります。私たちはこのような不確実な状況の中で、そのストレスを和らげる必要があります。

 

そのためには、まず、何が自分のストレスの原因なのかを、知ることが大切です。何が問題であるのかを知ることで、人はそれに対処し始めます。

 

自分の喪失に対して、悲しむことが必要な時もあります。できれば、直接会うことができなくても、家族や友人とコンタクトをとり、孤立しないようにしましょう。家の中で、自分の満足感が得られそうな活動を行っていきましょう。たとえば、好きな料理を作る、楽器を演奏する、家の中で行える運動をする、人に手紙を書く、など何でも構いません。無力感に押しつぶされないように、 自分の好きな活動を行って、コントロール感を維持してください。コントロールがきかない現在の状況の中でも、何が自分に役立つのかを自分自身で考え、実践することで、コントロール感を少しずつ高めていくことができます。

 

この現実に対処するためには、それぞれの人たちに創造性と想像力が必要です。たとえ喪失感が残ったとしても、私たちにはまだできることが、多くあるのです。

 

2020年 4月 Pauline Boss
翻訳:瀬藤乃理子(福島県立医科大学)、石井千賀子(TELLカウンセリング)


このウェブサイトについて
 

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、死者1万5899人、行方不明者2529人(2020年3月10日警察庁まとめ)という未曽有の大災害となりました。かけがえのない家族が行方不明のまま見つからなかったり、原発問題の影響などによって家があるにもかかわらずその家に戻ることができない、あるいは戻った故郷の町が以前とはまったく異なってしまった、といった現状に、今なお多くの方が困難な時期を過ごしておられます。

 

「あいまいな喪失」は、そのご家族にとって非常に大きなストレスとなり、終わりのない悲しみが続きます。また、同じ家に住む家族や、周囲の人たちに気持ちを理解してもらえないために、深く傷つくこともあります。

 

「あいまいな喪失」について知っておくことは、自分に起こっていることを理解することにつながり、それに対処する時の助けになります。また、その方を支えたいと思う支援される方にとっては、どのように支援したら良いのかのヒントになります。

 

この「あいまいな喪失」情報ウェブサイトは、2012年、喪失を支援する専門家の集まりであるJDGS(Japan Disaster Grief Support) Projectが立ち上げ、2015年に再編しました。東日本大震災から9年、Pauline Boss博士のあいまいな喪失理論は、さまざまな領域で反響を頂き、2020年、新たにサイトをリニューアルすることになりました。

どうぞご活用下さい。

「あいまいな喪失」に関する
本や研修会など
このウェブサイトを作成した
プロジェクトについて
お知らせ