回復の手がかり

「さよなら」のない別れ

2012年にPauline Boss博士が来日された時、行方不明者の家族の方に「あいまいな喪失」に関するできるだけ多くの正確な情報を知ってもらうことが、回復の手がかりになると、博士は話されました。例えば以下のようなことです。

 

あいまいな喪失の後では、どんなにしっかりした人であっても、心が不安定になります。また、以前はなんの問題もなかった家族関係が、あいまいな喪失を機に、ぎくしゃくすることもあります。それはその人のせいでも、その家族の問題でもありません。「あいまいな喪失」という状況が、人々や家族を動けなくするのです。すべての問題の原因は、あなたや家族の内面にあるのではなく、外からやってきたものです。

 

人は確実で安定した状況を好みます。状況や自分の気持ちに早く白黒つけたいと思う気持ちが出てくることは自然なことです。しかし、あいまいな喪失に対処する際、大切なことは、白黒つけたり、気持ちに区切りをつけることではありません。区切りをつけようと思っても、つけることが難しいからです。その時は、「AでもありBでもあり」という考え方をしてみましょう。例えば、「あの人はいなくなった、でも今も心の中にずっといる」「私は状況が変わらないことに不安がある、でも私には前を向いて進む機会もある」

 

回復のために非常に大切なことの1つが、人とのつながりです。大部分の人は、家族やコミュニティのサポートを得ることができれば、自分自身の力で回復できる力をもっています。あなたに適切な情報を提供してくれるサポートはありますか?また、あなたには今、「家族のような人」がいますか?(本当の家族でなくても構いません。「心の家族」と呼べる人です。)

その人は、気持ちを聞いてくれたり、精神的に支えてくれているかもしれません。あなたのことを、家族のように心配してくれているかもしれません。信頼できる人とのつながりは、あなたの心を和らげてくれたり、少し楽にしてくれたりすることでしょう。

 

あなた自身や家族の今の状況を、自分や誰かを責めずに、優しい気持で少し振り返ってみましょう。

 

あなたや家族が、あいまいな喪失によって失ったものは何ですか?

失わずにまだ持っているものは何でしょうか?

この状況は、あなたにとってどのような意味がありますか?

家族の中で、今はいない大切な人のことについて、意見の相違がありますか?

そのことで、夫婦や親子、きょうだいの間で葛藤がありますか?

あいまいな喪失のあと、家族の中で何か役割やルールが変化しましたか?

もし機会があれば、同じ状況にある人たちからそのような話を聞くことが、前に進む大きなきっかけになることもあります。