離婚が子どもに及ぼす影響

「さよなら」のない別れ

2017年の人口動態統計では、その年の離婚件数は21万組以上、また親が離婚した未成年の子どもの数は21万人を超えています。日本では、離婚後は単独親権により、親権者の親に子どもが養育される場合がほとんどで、単独親権者の約85%が母親です。また、離婚後に母子家庭となった2組に1組は、年収200万円以下の貧困家庭になるといわれています。

また、養育権のない親は、法的には離婚後は「面会交流」という形で会うことができますが、親同士の話し合いがうまく進まず、調停や審判などに発展する場合もあります。

 

離婚は、親にとって非常にストレスフルであるだけでなく、親の離婚を経験した子どもにとっても、さまざまな喪失体験となります。一緒に暮らすことができなくなった親は、生活上は不在になりましたが、心理的には存在しています。これは「あいまいな喪失」のタイプ1ということができるかもしれません。また、学校や住居も変わり、家庭の中の雰囲気も一変しているかもしれません。そのほかにも、母親が経済的な問題のために、朝から晩まで働き続ける生活になると、母親は一緒に暮らしているにもかかわらず、子どもは頼ることができず、心理的に不在になっているかもしれません。つまり、子どもにとっては、離婚によって「あいまいな喪失」のタイプ2も複合して経験することがあるのです。

 

また、離婚して子どもと離ればなれになった親にとっても、自分の人生や生活から子どもが不在になったことが、「あいまいな喪失」になる場合があります。

 

離婚に悩む夫婦やその家族の中にいる子どもたちをどのように支援するかは、非常に重要な課題です。諸外国では、子どものある夫婦が離婚する際に、離婚教育プログラムや親プログラムを義務付け、離婚が子どもに与える影響について両親が学び、両親間の争いを減らす取り組みもなされています。日本でも、離婚時・離婚後の子どもの支援の必要性が指摘され始めています。